文士の筆跡 2：作家篇2

はじめに
　明治開幕から今年は百年目にあたる。この一世紀にわたる時代の隆替は長い日本のどの世紀にも見ることのできなかつた起伏が見られるのであるが、その時期を背景とする文学の興亡もまためまぐるしいものであつた。
　「文士の筆跡」はこの一世紀にわたつて、日本近代の文学を樹立するために働いて、それぞれに文学史的な功業を示した文士たちの筆跡を集め、それを通じてその文士たちの文業と人をしのぼうとして企画されたものであるが、その中で作家篇は二巻とし、百数十名の作家をあげた。本巻はその第二篇で、第一篇と作家を折半して、略々時代順に配列した。
　書幅・原稿・書簡類などを博捜し、現役作家には新たに執筆を乞いなどして成つたものであるが、今日すでに稀覯に属するものも少なくはない。空前の挙といつてもよいと思う。
　本書は筆跡を中心とした近代文学史としてのおもしろさをも、充分にそなえていると信じている。

　　　昭和四十三年二月　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　瀬沼茂樹
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（本文〝はじめに〟より）

作家篇Ⅱ

はじめに　―――――――――――――――――――――――――――――――――――瀬沼茂樹

夏目漱石／高浜虚子／森田草平／鈴木三重吉／中勘助／野上弥生子／内田百閒／寺田寅彦／
阿部次郎／安倍能成／小宮豊隆／和辻哲郎／有島武郎／有島生馬／志賀直哉／武者小路実篤／
長与善郎／里見弴／倉田百三／賀川豊彦／菊池寛／芥川龍之介／豊島与志雄／永井荷風／
谷崎潤一郎／室生犀星／佐藤春夫／生田長江／久保田万太郎／丸岡明／葛西善蔵／宇野浩二／
広津和郎／坪田譲治／小川未明／浜田広介／宮沢賢治／福田清人／横光利一／川端康成／
小林多喜二／葉山嘉樹／林房雄／宮本百合子／佐多稲子／壺井栄／平林たい子／牧野信一／
嘉村礒多／梶井基次郎／中島敦／小林秀雄／亀井勝一郎／武田麟太郎／島木健作／堀辰雄／
高見順／太宰治／織田作之助／坂口安吾／石川淳／石坂洋次郎／丹羽文雄／火野葦平／井上靖／
大岡昇平／椎名麟三／田村泰次郎／梅崎春生／野間宏／三島由紀夫

昭和小説史―――――――――――――――――――――――――――――――――――瀬沼茂樹
作家の筆跡Ⅱ――――――――――――――――――――――――――――――――――松井如流
図版目録