古筆歳時記 3：恋・別・旅・雑

この第三冊には恋、別（哀傷を含む）、旅、雑に属する名歌九十五首を収めるとともに、その和歌を主に平安時代の能書家が書いた名筆の図版を、歌一首につき各二点を適宜、縮小して載せ、それぞれ解説を付した。

　恋
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［まだ逢はぬ人］　山桜／片糸を／夕暮は／夕月夜さすや岡辺の／思ひいづる／思ふには／
　　　　　　　　　浅茅生の／恋しきに／人の身も／心がへ／我を思ふ／よそにのみ
［つのる思ひ］　　思ひつつ／いとせめて／恋ひわびて／住の江の／つつめども／宵の間も／
　　　　　　　　　川の瀬に／かきくらし／侘びぬれば／わりなくも／はかなくて／虫のごと／
　　　　　　　　　露ならぬ／人知れぬ／命にも／風をいたみ／我が恋は行方も知らず／
　　　　　　　　　今ははや／頼めつつ逢はで年経る／我が恋はよむとも尽きじ
［恋のさ中］　　　起きもせず／有明の／風吹けば波打つ岸の／東雲の／明けぬとて／
　　　　　　　　　むばたまの闇の現は／うばたまの夢に何かは／知るといへば／心をぞ／
　　　　　　　　　逢ふからも／君をおきて
［人を待つ］　　　難波潟／君や来む／今来むと／月夜よし／頼めつつ来ぬ夜数多に／大幣の
［恋を見つめる心］月やあらぬ／逢ひ見ずは／陸奥の／偽りの／思ふてふ／忘れなむと／
　　　　　　　　　三輪の山／人知れず／世の中の／心こそ／色見えで／つれなきを

　別
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［旅立ち］　　　　立ち別れ／思へども／唐衣／雲居にも
［辞去］　　　　　別るれど
［避らぬ別れ］　　老いぬれば／世の中に
［惜別］　　　　　命だに
［哀傷］　　　　　明日知らぬ／限りあれば／皆人は／君まさで
［飽かぬ別れ］　　掬ぶ手の

　旅
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［望郷］　　　　　天の原
［二見浦］　　　　夕月夜おぼつかなきに
［海路］　　　　　わたの原
［明石浦］　　　　ほのぼのと
［御幸］　　　　　このたびは
［和歌の浦］　　　和歌の浦に
［越の白山］　　　思ひやる
［立田山］　　　　風吹けば沖つ白波

　雑
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［海神の景］　　　わたつ海の
［五節の舞姫］　　天つ風
［住吉の松］　　　我見ても
［旧友］　　　　　誰をかも
［廃家］　　　　　荒れにけり
［閑居］　　　　　わが庵は
［無常］　　　　　末の露／世の中は
［神遊び］　　　　神垣の
［君が代］　　　　我が君は
［常陸歌］　　　　筑波嶺の
［琴］　　　　　　琴の音に
［汲古］　　　　　いにしへの

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［収録歌人一覧］
　紀貫之　　　　　　　小野小町　　　　　　藤原敏行　　　　　　安倍清行
　紀友則　　　　　　　壬生忠岑　　　　　　藤原興風　　　　　　素性
　清原深養父　　　　　源重之　　　　　　　凡河内躬恒　　　　　在原業平
　藤原国経　　　　　　伊勢　　　　　　　　柿本人麿　　　　　　源融
　菅野忠臣　　　　　　在原行平　　　　　　伊香子淳行　　　　　伊都内親王
　白女　　　　　　　　藤原道信　　　　　　遍昭　　　　　　　　安倍仲麿
　藤原兼輔　　　　　　小野篁　　　　　　　菅原道真　　　　　　山部赤人
　良岑宗貞　　　　　　喜撰　　　　　　　　斎宮女御　　ほか