新訂 故宮博物院物語

中国文化の精華をことごとく網羅した紫禁城から、動乱と戦火のさなか、60余万点の文物が無傷のまま、如何にして海を越え台湾に辿り着いたか。前半で歴史秘話を明らかにし、後半で80余のカラー写真をそえて故宮文物の精粋を紹介。波乱の故宮ヒストリー。

第一章　最後の脱出作戦　　　　　　　　落城迫った重慶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　忘れられていた殷墟の文物
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　危機一髪、重慶を飛び立つ
第二章　三度の危機逃れた有霊の古物　　伝説の王朝「商（殷）」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　甲骨文字の大発見
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　正統な継承者は誰か
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　共産党の破壊免れる
第三章　伝えられた不滅の遺産　　　　　王朝の栄枯とともに
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　世界の中心「紫禁城」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　内廷に集められた秘宝
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　朝廷栄華の封建的構造
　　　　　　　　　　　　　　　　　　「玉」と「鼎」への信仰
　　　　　　　　　　　　　　　　　　「土」と「金」の中華文化
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　美術好きの皇帝たち
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　英仏連合軍の掠奪
第四章　清王朝から中華民国へ　　　　　封建王朝の崩壊
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　清朝復活の陰謀も
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　皇帝、紫禁城を去る
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　食べかけのリンゴ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　神技の書「三希帖」の行方
第五章　故宮博物院の誕生　　　　　　　ずさんをきわめた文物の管理
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　皇帝自身も盗み出す
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ニセモノのまぎれこむ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　初公開された紫禁城
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　戦雲、華北に迫る
第六章　帰らぬ旅に出た故宮の文物　　　上海へ、深夜の〝都落ち〟
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　南京での安住もつかの間
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　空襲の中を奥地へ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　二年がかりで大陸横断
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　山中に潜んで終戦を待つ
第七章　台湾に甦る中華民族の伝統　　　南京で最後の展示会
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　台湾への移送を決意
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　三次にわたる海上輸送
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　逸品のほとんどは台湾へ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　三十三年ぶりの安住の地
第八章　故宮の文物との語らい　〈甲骨〉漢字の原型、甲骨文字
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　中国の知恵、日本の知恵
　　　　　　　　　　　　　　〈青銅器〉奇怪な紋様は何を物語る
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　礼器と酒の効用
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　歴史を証言する銘文
　　　　　　　　　　　　　　　〈玉器〉世界にも珍しい〝玉信仰〟
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　邪悪をしりぞける玉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　玉の黄金時代迎えた清
　　　　　　　　　　　　　　〈陶磁器〉日本より千年早い磁器の誕生
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　副葬品の芸術、唐三彩
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　世界の逸品、宋の磁器
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　青花磁器の移り変わり
　　　　　　　　　　　　　　　　〈書〉楷書が生まれたのは漢代末期
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　書を変えた紙の発明
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　書聖・王羲之、蘭亭に遊ぶ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　書の生命力の不思議
　　　　　　　　　　　　　　　〈絵画〉匈奴に嫁いだ王昭君
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　山水画の誕生
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　絵画を芸術に高めた宋の徽宗
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　北画と南画――正統と墨戯
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　真贋論争続く「清朝上河図」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　皇帝印璽の意味するもの

主な参考・引用文献
あとがき