心ときめく万葉の恋歌

心ときめく万葉の恋歌
著者 上野 誠
中嶋玉華
ジャンル 書道書籍 > 単行本 > その他
出版年月日 2012/09/07
ISBN 9784544051537
判型・ページ数 B6変・160ページ
定価 1,760円
(本体1,600円+税10%)
在庫 在庫あり

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恋する気持ちは、今も昔も…。 『万葉集』から恋の歌35首を精選。ユーモアをまじえ、現代人に通じる感覚で万葉学者が解説し、料紙・短冊など美しい素材を駆使して、かな作家が再現する。歌と書が織りなす優雅なコラボレーション。





 書に何を見るか―序にかえて―  上野 誠

一章 四季に寄せ、花に寄せて

 春雨に 衣はいたく 通らめや 七日し降らば 七日来じとや
 我が背子に 我が恋ふらくは 奥山の あしびの花の 今盛りなり
 やどにある 桜の花は 今もかも 松風速み 地に散るらむ
 人言は 夏野の草の 繁くとも 妹と我とし 携はり寝ば
 道の辺の いちしの花の いちしろく 人皆知りぬ 我が恋妻は
 君待つと 我が恋ひ居れば 我が屋戸の 簾動かし 秋の風吹く
 石上 布留の早稲田の 穂には出でず 心の中に 恋ふるこのころ
 よしゑやし 恋ひじとすれど 秋風の 寒く吹く夜は 君をしぞ思ふ
 秋の田の 穂田の刈りばか か寄り合はば そこもか人の 我を言なさむ
 我が背子が 言愛しみ 出でて行かば 裳引き著けむ 雪な降りそね
 冬ごもり 春の大野を 焼く人は 焼き足らねかも 我が心焼く


二章 淡き恋、熱き恋

 朝戸出の 君が足結を 濡らす露原 早く起き 出でつつ我も 裳の裾濡らさな
 皆人を 寝よとの鐘は 打つなれど 君をし思へば 寝ねかてぬかも
 遠妻と 手枕交へて 寝たる夜は 鶏がねな鳴き 明けば明けぬとも
 月立ちて ただ三日月の 眉根掻き 日長く恋ひし 君に逢へるかも
 朝影に 我が身は成りぬ 韓衣 裾のあはずて 久しくなれば
 色に出でて 恋ひば人見て 知りぬべし 心の中の 隠り妻はも
 忘るやと 物語りして 心遣り 過ぐせど過ぎず なほ恋ひにけり
 降る雪の 空に消ぬべく 恋ふれども 逢ふよしなしに 月ぞ経にける
 かにかくに 物は思はじ 朝露の 我が身一つは 君がまにまに
 独り寝と 薦朽ちめやも 綾席 緒になるまでに 君をし待たむ
 白たへの 君が下紐 我さへに 今日結びてな 逢はむ日のため
 あからひく 肌も触れずて 寝たれども 心を異には 我が思はなくに


三章 想う人、想われる人

 我が背子が 着る衣薄し 佐保風は いたくな吹きそ 家に至るまで
 君が行く 海辺の宿に 霧立たば 我が立ち嘆く 息と知りませ
 信濃なる 千曲の川の 小石も 君し踏みてば 玉と拾はむ
 我妹子は 衣にあらなむ 秋風の寒きこのころ 下に着ましを
 我が恋は 千引きの石を 七ばかり 首に掛けむも 神のまにまに
 笠なみと 人には言ひて 雨つつみ 留まりし君が 姿し思ほゆ
 言出しは 誰が言なるか 小山田の 苗代水の 中淀にして
 誰ぞこの 我がやどに来呼ぶ たらちねの 母にころはえ 物思ふ我を
 今日なれば 鼻の鼻ひし 眉かゆみ 思ひしことは 君にしありけり
 かにかくに 物は思はじ 飛騨人の 打つ墨縄の ただ一道に
 この花の 一よの内に 百種の 言ぞ隠れる 凡ろかにすな
 君により 言の繁きを 故郷の 明日香の川に みそぎしに行く


 あとがき  中嶋玉華

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(本体1,600円+税10%)

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