山頭火、飄々[流転の句と書の世界]

さんとうか、ひょうひょう[るてんのくとしょのせかい]

山頭火、飄々[流転の句と書の世界]
著者 村上 護
ジャンル 書道書籍 > 単行本 > 作家・評伝
出版年月日 2000/09/27
ISBN 9784544020502
判型・ページ数 A5・208ページ
定価 2,200円
(本体2,000円+税10%)
在庫 在庫あり

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無一物の世捨人として行乞行脚し、漂泊の生涯を歩みつづけた種田山頭火。現代人の胸を打つその魅力を、代表句80点の自筆墨跡と鑑賞解説文、多彩な関連写真(風景・句碑・日記・遺品・報道写真など)とともにたどる。年譜、行脚地図、収録句索引を付録。





序――誕生(明治15年12月3日)~出家得度・堂守時代(大正15年4月/43歳)

Ⅰ――味取観音堂出立(大正15年4月)~結庵以前(昭和7年9月/49歳)
     鴉ないてわたしも一人/分け入つても分け入つても青い山/
     炎天をいたゞいて乞ひあるく/ほろほろ酔うて木の葉ふる/へうへうとして水を味ふ/
     木の芽草の芽あるきつづける/法衣こんなにやぶれて草の実/分け入れば水音/
     まつたく雲がない笠をぬぎ/しぐるゝや死なゝいでゐる/
     すべつてころんで山がひつそり/涸れきつた川をわたる/
     けふはけふのみちのたんぽゝさいた/ここで泊らうつくつくぼうし/
     霜夜の寝床がどこかにあらう/酔うてこう(ほ)ろぎと寝てゐたよ/
     雨だれの音も年とつた/笠も漏りだしたか/生死のなかの雪ふりしきる/
     うしろ姿のしぐれてゆくか/鉄鉢の中へも霰/ふるさとは遠くして木の芽/
     笠へぽつとり椿だつた/ほうたるこいこいふるさとにきた/
     雨ふるふるさとははだしであるく/ほろりとぬけた歯ではある

Ⅱ――其中庵結庵(昭和7年9月)~自殺未遂(昭和10年8月/52歳)
     其中雪ふる一人として火を焚く/お正月のからすかあかあ/雪ふるひとりひとり行く/
     てふてふうらからおもてへひらひら/しようしようとふる水をくむ/
     春風の鉢の子一つ/こころすなほに御飯がふいた/ながい毛がしらが/
     へちまぶらりと地べたへとゞいた/ひろがつてあんたのこゝろ/
     沙にあしあとのどこまでつゞく/死をまへにやぶれたる足袋をぬぐ/
     霽れててふてふ二羽となり三羽となり/柳ちるそこから乞ひはじめる/
     これから旅も春風の行けるところまで/かげもはつきりと若葉/
     うれしいこともかなしいことも草しげる/ひとりひつそり竹の子竹になる/
     空へ若竹のなやみなし/草のそよげばなんとなく人を待つ/
     あたゝかなれば木かげ人かげ/ひつそりさいてちります/
     一つあれば事たるくらしの火をたく

Ⅲ――自殺未遂後(昭和10年8月)~風来居時代(昭和14年9月/56歳)
     死んでしまへば雑草雨ふる/旅から旅へまた一枚ぬぎすてる/
     風の中おのれを責めつゝ歩く/晴れて風ふくふかれつゝ行く/
     遠くなり近くなる水音の一人/草は咲くがまゝのてふてふ/
     ふたゝびはふむまい土をふみしめて征く/街はおまつりお骨となつてかへられたか/
     雪ふる食べるものはあつて雪ふる/母ようどんそなへてわたくしもいたゞきます/
     このみちを行くより外ない草しげる/ごろりと草にふんどしかわいた/
     水のうまさを蛙鳴く/山すそあたゝかなこゝにうづめます/へそが汗ためてゐる/
     ひつそり生きてなるやうになる草の穂/旅もいつしかおたまじやくしが鳴いてゐる/
     炎天レールまつすぐ

Ⅳ――四国巡礼(昭和14年10月)~死去(昭和15年10月11日/57歳)
     鴉飛んでゆく水をわたらう/秋空の墓をさがしてあるく/
     その松の木のゆふ風ふきだした/べうべううちよせてわれをうつ/
     道がなくなり落葉しようとしてゐる/身のまわりがたずけて山なみの雪/
     濁れる水のながれつゝ澄む/ずんぶり湯の中の顔と顔笑ふ/ここにおちつき草もゆる/
     おたたも或る日は来てくれる山の秋ふかく/絶筆三句

山頭火行脚地図

あとがき

索引

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